一般的に検査の信頼度を示す指標として、感度と特異度の2つがあります。感度は、感染している人を検査して正しく陽性と判定する割合、特異度は、感染していない人を検査して正しく陰性と判定する割合です。
どちらも100%であることが理想ですが、そのような検査法は存在しません。感度をあげようとするとノイズを拾って、感染していないのに陽性と判定してしまう可能性が大きくなります。逆にノイズを拾わないようにすると、感染を見逃す可能性がでてきます。感度と特異度はトレードオフの関係にあります。
コロナのPCR検査の場合、感度は70%くらい、特異度は99.9%くらいと言われています。つまり100人の感染者を検査すると70人が正しく陽性と判定され、30人が間違って陰性と判定されます。また1000人の感染していない人を検査すると、999人が正しく陰性と判定され、1人が間違って陽性と判定されます。
ここで問題です。
まだコロナがそれほど広がっておらず、感染者が10万人に1人の割合である頃を想定します。つまり日本全体で1200人程度しか感染していない時期です。
この頃にあなたがPCR検査を受けたところ、「陽性」と判定されました。あなたが感染している確率はどれくらいでしょう?
99.9%ですか? あるいは70%でしょうか?
※ここは確率の問題なので、感染者はクラスターとして集中しているのではなく、均一にばらまっているという仮定で考えてください。
答え
0.7%
解説
100万人を検査したとします。100万人中、感染している人は10人、感染していない人が99万9990人です。
感染している人10人の内、7人は陽性と判定され、3人は陰性と判定されます。感染していない99万9990人については、その99.9%の99万8990人が陰性と判定され、0.1%の1000人が陽性と判定されます。
陽性と判定された人は、感染していて正しく判定された7人と、感染していないのに間違って陽性と判定された1000人の、合わせて1007人です。そのうち感染している人は7人なので、あなたが感染している確率は7/1007、つまり0.7%になるわけです。
一方、陰性と判定された場合についての確率は、同じように計算して、3/998993でおよそ100万分の3になります。どちらにせよ心配する必要はなさそうです。
このように感染者の割合が非常に少ない状態でのPCR検査は全く信用できません。検査対象の感染が強く疑われる状況で始めて有効となります。
コロナのパンデミック初期に、「日本のPCR検査件数が少なすぎる」と世界から非難されることがありましたが、上の例からわかるように、感染者が少ない初期に大規模なPCR検査をすることは、無意味である上に有害です。日本の対応は正しかったと言えます。
検査は事前確率が高い状態、つまり感染が強く疑われる状況で実施して始めて意味を持つということです。
ちなみに今現在のようにオミクロンが猛威を奮っている状況では、検査の信頼度は全くちがってきます。現在の検査件数は毎日20万件程度、そして陽性者数は8万人を超えるような状況です。
検査対象となるのは、濃厚接触者であったり、熱があったりして、コロナ感染が強く疑われる人です。
検査対象の20万人の内、感染している人が60%の12万人であると仮定します。PCR検査の感度を70%とすると、陽性と判定される人は8万4000人になります。一方、感染していない8万人の内、0.1%の800人が間違って陽性と判定されます。合計の陽性者数は8万4800人です。
不幸にしてあなたが感染を疑われて検査を受け、陽性と判定されたとします。その時、あなたが本当に感染している確率は、8万4000/8万4800=99.06%です。
このような状況で陽性になったら、ほぼ間違いなく感染していると言えます。
一方、検査結果が陰性になったからといって安心はできません。陰性と判断された人が感染している確率は、3万6000/(3万6000+7万7200)=31.3%です。
陰性であっても2-3日後に陽性になる確率は30%以上あるということになります。
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