これはCDS(クレジットデフォルトスワップ)という取引の相場をみれば判断できるという。
ということで、CDSについてわかりやすく解説したい。
基本的な仕組み
CDSは債券が破綻することに対する保険だと考えるとわかりやすい。
プロテクションの買い手Aとプロテクションの売り手Bがいる。Aは自分が持っている国や企業の債券がデフォルトになったときに備えて、保証料としてプレミアムをBに支払う。
Bはプレミアムを受け取る代わりに、債券がデフォルトした場合、その債券を額面で買い取る。
もともとはこのようにデフォルトに備えた保証という仕組みであるが、この権利を売買することも可能であり、そのための市場が存在する。債券の信用リスク変動に伴ってプレミアムの価格も変動するので、権利の売買で利益を上げることもできる。
デリバティブ取引と呼ばれるものであるが、ここでは話をややこしくするだけなので、触れない。
プレミアム
プレミアムは普通、1年間の料率で、たとえば30bpなどという形で示される。bpとはベーシスポイントといって0.01%のことであり、30bpなら0.3%を意味する。仮に10億円の債券であれば、その保証料が年間300万円ということになる。
このプレミアムは一般的に年4回に分けて支払う。上の例であれば3ヶ月毎に75万円を支払う。満期までの期間は1年や5年が多い。
デフォルト
債券がデフォルトした場合、プロテクションの売り手は、その債券を額面で買い取り、契約は満了となる。それ以降の支払いはない。
CDSは債券とは切り離して売り買いできるので、CDSを持っている人が債券も持っているとは限らない。このためプロテクションの売り手側は「回収率」を決める。この回収率は額面の何%が回収できるかという数字である。そして債券を持っていない人には、この回収率を差し引いた金額を渡し、債券を持っている人には、その債券を回収率で買い取る。
価格の設定
債券の額面を\(S\)、料率を\(p\)とすると、1年間に支払うCDSプレミアムは\(pS\)である。
デフォルトしなかった場合、Aは\(pS\)を支払い、Bは\(pS\)を受け取る。つまりAは\(pS\)の損失、Bは\(pS\)の収益を得る。
デフォルトしなかった場合:
\[Aの損失=Bの収益=pS\]
一方、期間中にデフォルトした場合、Aは\(S(1-r)\)を受け取る。ここでrはデフォルトした債券の回収率である。仮に\(r=25\%\)の場合、デフォルトした債券が額面の25%になることを意味している.
プレミアムの支払いは分割払いになっており、もし期間途中でデフォルトがあった場合、それ以降の支払いは不要となる。デフォルト確率が期間中一定であるとすれば、平均的な支払いは、\(pS\)の1/2となる。プレミアムの支払いも考慮したABの損益は次のようになる。
デフォルトした場合:
\[Aの収益=Bの損失=S(1-r)-pS/2=S(1-r-p/2)\]
上記を総合して、1年デフォルト確率を\(d\)とした場合のAとBの損益期待値は次のようになる。
\[Aの損失期待値=Bの収益期待値=(1-d)pS- dS(1-r-p/2)\]
この期待値がA、Bともにゼロになるように料率を決めるとABともに公平となる。
\[(1-d)p-d(1-r-p/2)=0\]
\[p=d(1-r)/(1-d/2)\]
ただし、実際にはデフォルト時に大きな支払いが発生するなど、プロテクションの売り手側のリスクは大きいので、そのリスクを加味した利益分が上乗せされる。
CDSから破綻確率を推定する
上記の価格設定の仕組みを知れば、CDSの価格から市場が見ている「デフォルト確率」が推定できる。仮に1年ものCDSのプレミアムが30bpで、回収率を25%と仮定すれば、デフォルト確率は次のようになる。
\[d=p/(1-r+p/2)=0.003/(1-0.25+0.003/2)=0.004\]
破綻確率は0.4%
このようにプレミアム\(p\)が小さい時、破綻確率は\(p/(1-r)\)と考えてよい。プレミアムに売り手側のリスク分が乗っかっているとすれば、もう少し確率は小さくなる。
ロシア国債
一方、ロシア国債の場合、プレミアムは3000bpを超え、さらには分割払いでなく、最初に頭金の支払いが必要となっている。3月10日のブルームバーグ報道によると、1000万ドルのロシア国債の保証コストは、前払い580万ドル、プラス年10万ドルである。
一年間の平均支払い総額は580+10/2=585万ドル。デフォルト時に支払われる金額は、回収率が25%として750万ドル。これからデフォルト確率を推定すると
\[d=585/750=78\%\]
プレミアムの上乗せ分が10%とすると
\[d=585/750/1.1=70.9\%\]
ブルームバーグでは一年以内のデフォルト確率は71%としているので、ほぼこのような考え方であっていそうだ。
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